じっとりと湿った暑い空気が皮膚にまとわりつき、肌が汗ばむ。
だから夏は苦手なんだ、と荒い呼吸の下でシードが表情を歪める。
顔を上げると、ちょうどクルガンがくわえた煙草に火をつけるところだった。
闇の中、マッチの炎が赤く灯る。
「…」
情事の後には珍しくもない、見慣れた光景。
確かこいつも暑いのは苦手だと言っていた気がするのだが、何故にこうも涼しげなのか。
何だかそれが悔しいのは、暑さで狭量になっているからか。
少し上半身を持ち上げ、タックルするように勢いよく腰に抱きついた。
「シード?」
普段は抱きつくことなど決してない。
いつでも冷静なクルガンの声に、珍しく分かりやすいほどの驚きが混ざっている。
滅多に聞くことのない声音に、思わずと笑いが漏れてくる。
「俺だけ暑いのは不公平だからお裾分け」
くつくつ笑いながらぎゅうと抱き付くと、呆れたような嘆息が頭上から落ちてきた。
「別に暑いのはお前だけじゃない」
言われてみれば抱き付く肌は、いつもより火照っている。僅かに汗ばんでもいる。
が、果たしてこれは暑さのせいなのか。
「…ヤってたせいじゃねぇの?」
ぽつりと呟くと、煙草の煙を吐き出しながら頭をはたかれた。
「お前にムードを求めているわけではないが、それにしてもお前は直接的すぎる」
「直接的でない俺なんざ俺じゃないだろ」
「違いない」
くつくつと噛み殺した笑いを漏らすと、頭上からの声にも笑いが含まれているのに気付いた。
腰に抱きついたまま顔を上げると、此方を見下ろしてくる青灰と目が合う。
視界の端で赤い光が消える。
触れるように柔らかく重なった唇から、微かなメンソールの香が広がった。
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